[地域の防災を考える]岡山で巨大地震が起こったら―。

南海トラフ これまでの活動実績

岡山理科大学教授 西村敬一 氏

自身から身を守る、新しい知恵

岡山理科大学教授 西村敬一 氏

東日本大震災から半年が経ち、その後もひんぱんに日本列島で起きる地震。日頃からの防災意識は、ますます高まる一方です。今回は、『岡山平野の基盤構造と地震災害に関する研究』が専門の岡山理科大学 総合情報学部 生物地球システム学科 西村敬一教授に「防災対策」を中心にお話をお伺いしました。

揺れが1分以上続いたら巨大地震のサイン

南海トラフ

今年、東日本大震災をはじめ水害など多くの災害が頻発し、「想定外」の災害という表現がひんぱんにマスコミでも飛び交いました。岡山でもいつ大きな地震が起きても不思議ではありません。岡山で一番大きな被害が想定される「南海トラフで起きる地震」は、「南海地震」と呼ばれ、過去に巨大地震が何度も発生。戦後間もなく起きた「昭和南海地震」でも、岡山県南の干拓地を中心に、地盤の弱い地区では全壊した家が続出した記録が残っています。

では、このような甚大な被害が出る巨大地震と、普段、ほとんど被害が出ない規模の地震との違いは何なのでしょう。それは、揺れる時間です。小さな地震では、せいぜい数秒から10秒くらいで済む揺れが、1分も続く揺れだと、「ただの地震じゃない」と覚悟してください。それは、マグニチュード8以上の巨大地震の可能性が高いのです。

東日本大震災の場合、大きな揺れが5分も続いたことがわかっています。特に、岡山で一番大きな被害が想定される「南海トラフで起きる巨大地震」の場合には、震源地そのものから1分~2分の間、地震波が出続けることがわかっています。これは、阪神・淡路大震災の地震波が15秒間しか続いていないことから見ても、いかに大きな被害になるか、想像がつきます。また、県南では埋め立てられた土地が多くみられ、弱い地盤の揺れはもっと長く続くこと、液状化による建物の倒壊など、リスクがより高くなります。

見直し段階の「岡山地震・津波防災対策」とは

現在、岡山県では東日本大震災を受けて、南海地震に適用した場合の津波・浸水地域の予測を発表しています。それはこれまでの想定を約1.5~2倍も上回り、高いところでは4~5mにもなる津波が来るという内容でした。2mの津波には一軒家が流されてしまう破壊力があります。市街地においては、海抜が約2mの岡山駅周辺も、水没する予測が立てられています。ただ、岡山は地理的に地震が起きて津波が来るまで、約2時間かかるため避難する時間的余裕は確保されます。

しかし、中央防災会議によると、地震後は、道路が寸断される場合に備え「徒歩による避難を原則とする」と発表しています。そうなると子ども・お年寄り・身体の不自由な方など避難が困難な場合も想定されます。

それから岡山の場合、液状化現象で建物が傾いた場合の避難場所の問題もあります。道路が寸断された場合の第二、第三の避難ルートなどの取り組みを始めた自治体もありますが、まだまだ、岡山県はこれらの問題が解決されていない段階ですので、早急な対策が望まれます。

FM倉敷が開発した災害用「全国初・緊急告知ラジオ」

震災後の情報は、命に関わる場合もあります。現実にはデマによるパニックなど、深刻な混乱が起きています。

実際に災害情報等を流し、威力を発揮した例として、新潟県中越地震で使用された、災害情報等を伝える「緊急告知FMラジオ」というものがあります。このラジオは地域のFM放送を聴けるものですが、災害の発生時には自動的に電源が入って、災害情報等を大音量で伝えるものです。神戸の地震のときから注目され始め、岡山では、FMくらしきなどが開発した「こくっち」が知られています。また、被災後、被災者への必要な情報を流す役割も担っています。こういった情報確保のため、命を守るためこの緊急告知FMラジオなどを広く活用することが、とても重要です。

温故知新地震の間が現代に復活

かつて、お城や貴人の屋敷などに、地震を避けるための「地震の間」という特別な造りの部屋がありました。

巨大地震が起きると、大きな揺れのため、家の構造そのものが破壊されることがあります。その対策として、家が壊れてもその部屋へ逃げ込めば大丈夫という強固な部屋を造ることが考えられたのです。現代にもそれが応用され、鉄骨を使用した「現代版・地震の間」を造るなど、巨大地震の対策がとられるようになりました。

地震後にしなければならないこと

何をおいても、火の元を消すことです。地震後の火災による二次災害は、極力食い止めなければなりません。電気のブレーカー、ガス栓を中心に火の原因になるものを断ちましょう。また、最低限の水・非常食などの確保も日ごろから気を付けたいものです。

災害は避けられないものです。家族や、親しい人との安否を確認するためなどの連絡方法は、例えば「伝言サービス」で取り合うなど決め、万が一の災害に備え、不安やパニックを避け、少しでも心身のストレスをためない工夫をしましょう。

西村敬一プロフィール

岡山理科大学教授 西村敬一 氏
  • 出身大学院・研究科等 京都大学 博士 (理学研究科 地球物理学)、岡山理科大学 総合情報学部 生物地球システム学科
  • 研究分野:物理探査、地震動災害、地質環境、テクトニクス
  • 1993~1994 京都大学 講師
  • 1994~1997 京都大学大学院 講師
  • 1997~ 岡山理科大学 教授

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